ドライバー確保に向け
少子高齢化による労働力不足が物流業界に与える影響が顕在化しつつある。特に近い将来、問題化しそうなのが、国内物流の大半を担うトラックのドライバー不足。大型トラックドライバーの年齢構成は1993年には20代が全体の約15%を占めていたが、98年には約13%、2003年には約8%と徐々に減少し、08年には約5%まで落ち込んだ。20代が極端に落ち込む中、他の年齢層をみてみると30代は93年の約26%から08年の約28%に、40代は93年の約36%から08年の約32%に、50歳以上に関しては98年の約23%から08年の約35%と高齢化が進んだ。
この傾向をさらに加速させているのが、07年6月から始まった新免許制度。07年6月までは普通運転免許で車両総重量8トンまでの車両が運転可能だったが、07年6月以降に取得した新普通運転免許ではトラック運送の主力である4トントラック(車両総重量5トン以上)の運転ができなくなった。普通免許を取得後、2年経過しないと"トラック"を運転できる免許が取得できないため、かつてのように「普通免許を保有しているので、トラックドライバーに」という選択を若年就労者が採れなくなったことが、ドライバー不足に拍車をかけつつある。
年齢構成の変化と新免許制度によってトラックドライバーの確保が年々難しくなってきている状況を受けて、一部の都道府県トラック協会はドライバー確保へ向けた様々な取り組みを本格化させている。
●埼ト協の分析では埼玉県内の中・大型免許の取得者数は必要数の半分程度に
将来のドライバー不足に対する取り組みを本格的に始めている地方トラック協会の一つが埼玉県トラック協会(埼ト協、横塚正秋会長)。
埼ト協によると、埼玉県内における車両総重量5トン以上の中型及び大型トラックは自家用トラックを含めて約18万台。20歳から65歳までの45年間を就労期間として仮定すると年間約4000名の中型及び大型運転免許取得者がいなければ、現状の物流機能が維持できない計算になる。新免許制度開始から約3年が経過した昨年の埼玉県内の中型免許取得者は152名に過ぎず、大型運転免許取得者の2046名を加えても2198名にしかならず、県内のトラック車両数に対して必要なドライバーの半分近くしか免許取得者がいない。埼ト協はこうした傾向は免許制度やそれを取り巻く環境に変化がない限り、さらに加速していくと予想。トラックドライバー確保のために中型・大型免許取得支援のための助成制度や運転免許練習センターの運営といった具体的な事業を開始した。
中型・大型免許取得支援助成は大型自動車免許、中型自動車免許、8トン限定中型免許限定解除の取得に際してかかった費用のおよそ半額を埼ト協が助成するもので、この制度は09年4月からスタートした。当初は大型免許取得で1名あたり10万円、中型免許取得については5万円、限定解除は3万円をそれぞれ助成していたが、10年からは制度を拡充し、大型免許、中型免許ともに15万円を助成している。
●免許取得費用の助成に加えて中・大型免許取得に向けた練習コースの設置も
免許取得費用そのものへの助成に加えて、埼ト協は免許取得のための練習コースの提供も始めている。新免許制度開始以降、埼玉県内で大型免許教習を受けることができる自動車教習所数は新制度開始前の33箇所から、12箇所(中型教習は27箇所)にまで減少している。これは新制度スタートにともない、大型車教習に必要な車両やコースが、かつての増トン車程度の車両からフルサイズの大型車に変更されたため、施設拡張などに対応できない教習所が多かったからだ。大型免許教習が受けられる教習所数は全国的に見ても減少しており、地域によっては1県に1箇所しかないケースもあるという。
埼ト協は免許取得のための教習所が少ないという現状を改善する必要があると判断し、「運転練習場開設特別委員会」を設置し、検討を重ねてきた。検討の結果、埼ト協が埼玉県深谷市に設置している埼玉県トラック総合教育センターに練習コースを設置することを決めた。既に練習コース設置のための改修工事日程も決まっており、10年7、8月にかけて工事を完了させ、9月上旬には練習コースをオープンさせる。埼ト協の練習コースには専門の教官が付き、免許センターでの仮免許取得に向けた練習ができる。路上教習については県内の中型・大型免許教習が可能な教習所を利用者に紹介することで免許取得をフォローする流れとなっている。
●新免許制度が今後与える各種影響を検討する特別委員会も設置
こうした中型・大型免許所有者確保のための各種支援事業に加えて、埼ト協では新免許制度によって物流や社会生活に今後、生じる可能性のある各種問題を分析する特別委員会を設置。6月23日には第1回会合を開いた。
こちらの特別委員会には委員として埼ト協会員のほか、埼玉経済同友会や埼玉県経営者協会、埼玉県商工会議所連合会といった経済団体、大型トラックメーカー4社、労働組合が参加するほか、オブザーバーとして埼玉運輸支局、埼玉県警察本部、埼玉労働基準局などの行政機関も出席。特別委員会では中型・大型運転免許の取得推進策や中型運転免許に対応した車種の開発、新免許制度が物流や社会生活に及ぼす影響、さらには新制度導入にともない発生するドライバー不足問題の周知などを議論、検討し、最終的には関係行政機関や車両メーカーに対しての提言を行う。
特別委員会には中型及び大型免許取得推進等に関するワーキンググループと中型運転免許に対応したトラック車両の基準の見直し等に関するワーキンググループの2つのワーキンググループを設置して、様々な分析を行う予定で今後の取り組みが注目される。
カーゴニュース6月29日号
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